GLOBAL FEATURE海外事業特集
02

ベトナム事業大規模不動産開発に
挑む

ベトナム市場への参入を果たした2015年以来、
野村不動産は、
複数の大規模不動産開発プロジェクトに参画。
その最前線でベトナム事業に携わる担当者二人の
取り組みを追った。

in VIETNAM

Takashi Matsuo
松尾 剛志
海外事業本部 海外事業二部
2013年入社
入社後、再開発事業において事業推進を担当。北京現地法人出向、海外企画部を経て、2020年より海外事業二部に異動し、ベトナム事業を担当。
Takehiro Hozumi
保泉 雄大
海外事業本部 海外事業二部
2009年入社
入社後、住宅事業本部に所属し、分譲住宅の用地取得、営業、担当物件のチーフを担当。海外留学派遣を経て、2020年より海外事業二部に異動し、ベトナム事業を担当。
成長拡大へ向けての重点国の一つ、ベトナムへの想い

野村不動産は2015年からベトナムでの不動産開発事業をスタート。有力な現地パートナーと連携して、ベトナム・ホーチミン「フーミーフン」エリアにおいて日系企業初の不動産開発「ミッドタウン・プロジェクト」を開始。また、2019年には同じくベトナム・ホーチミンにおける大規模開発事業「グランドパーク・プロジェクト」へ参画した。

2015年〜2019年まで中国で不動産開発事業を担当し、帰国後、海外リスクマネジメントを担当していた松尾が、ベトナム事業にアサインされたのは2020年のことだった。「1年間、海外事業の体制整備に携わっていたので、そろそろ事業に携わりたいなという気持ちがありました。ベトナムは当社の成長拡大に向けての重点国の一つ。自ずと闘志が湧きました」

一方、入社以来10年間、一貫して国内の住宅事業の最前線にいた保泉は、1年間の海外留学派遣を経て、ベトナム事業担当に。「海外留学派遣プログラムにてインドの現地デベロッパーでインターンシップを経験した時に感じたのは、海外の文化と日本の文化は全く違うということ。そこに自分がアジャストしていくのは大変なことだと思いましたが、その一方で、ベトナムという自分にとって未知の国での事業に携われることへの期待に胸が膨らみました」

事業参画のポイントは、どう成長戦略を描けるか

プロジェクトの事業推進を主導するのはベトナム現地法人。それに対して、本社側の松尾と保泉の役割は、各プロジェクトのマネジメントだ。「当初の計画通りにプロジェクトが動いているか、スケジュールや予算に対する実績などを確認しています。難しいのは、現地パートナーとはリスクに対する考え方が異なること。それが事業の計画・見立てなどに影響して、意見が異なることが多々あります。お互いの考えを理解し擦り合わせていくことは大変ですが、自分とは異なる考え方に触れられるのは楽しいところでもあります」と松尾は語る。

そんな中、二人は大役を任される。それは、2件の新規プロジェクト参画のための事業参画提案だ。「本事業における社内の判断基準はとても厳しいものでした。一方で、非常に事業スピードが速いJVパートナーの国内大手企業や現地パートナーは、野村不動産にもスピード感を求めてくる。そんな中、当社がプロジェクトに参画する意義やメリットを整理した上で、納得感があり、かつ相手の心を動かすようなプレゼンを考え実行することに尽力しました。重要なのは、当社としては利益が上がるだけでは参画できないということ。長い目で見て、当社がプロジェクトに参画することで、ベトナムでどのような成長戦略を描けるか? それをとことん追求し、ロジカルに説明することに尽力しました。」と松尾は語る。

ベトナムでの事業はどのくらい実現性があるのか……。リサーチしたのは保泉だ。「日本であれば近隣エリアの競合物件の価格・販売状況等を調べることで、判断をしていますが、当プロジェクトは一万戸というこれまでに経験したことのない規模。より大きな視点で、ベトナムの産業動向やそこから類推される需要層の拡大などから、マーケットを精緻に見ていく必要がありました」

約半年後の9月、松尾と保泉の努力が実を結び、新規プロジェクトへの参画が決定。現在はプロジェクトスタートに向けての準備を進めている。

「現地ニーズ」×「野村不動産ならではの価値」の提供へ

保泉は、2020年8月から営業活動が開始された「グランドパーク・プロジェクト」の進捗状況を把握するために、ベトナムに赴いた。そこで戸惑ったのは、国内と海外の営業方法の違いだ。「例えば、日本では、来場アンケートを取得して、お客様との商談に活用したり、来場傾向を掴んでプロモーションの参考にしたりしますが、ベトナムではそもそも来場アンケートなど存在しません。では、どうやって営業活動を行うのか? どうやってプロモーションを考えているのか? 正直、まだ分からないことも多く、苦労しています」

そんな中、保泉は現地の文化や特性を理解した上で、自分たちはどんなことで貢献できるか、国内事業で培ってきたノウハウを現地で活かす方法がないか、必死に模索中だ。

そんな保泉の取り組みの意義を松尾は力強く語る。「当社が目指しているのは、まずは現地にどっぷり浸かって学んで、最後は当社ならではの価値創造を行い、自分たち自身で不動産開発事業をリードしていくことです。保泉は今、現地で学び、当社ならではの提案をぶつけ、そこで肯定も否定もされながら知見を得ているところ。それらを将来できることにつなげることが大事だし、ベトナムにおいても当社が創造する価値は必ず求められると考えています」

そう松尾が考える理由は、中国で不動産事業に携わった経験にある。「自分の勝手な思い込みで、中国人の方々は日本ほどきめ細やかなサービスを求めていないと思っていたんです。ところが、当社が参画している「北京発展ビル」は30年前からきめ細かいサービスを提供していて、それが中国人の方々に非常に評価されていることがわかって。そこで先入観を持たずに、現地で実際に見聞きしていろんなことを考えていくことが重要だと思ったし、繰り返し提案していくことで、当社の価値を理解し評価していただけるはずだと確信しました」

企画段階からプロジェクトに参画。本格的な挑戦が始まる

松尾と保泉が尽力し、野村不動産が参画を決めた新規プロジェクトのうちの一つ、「エコパーク・プロジェクト」は、総敷地面積約500ヘクタールに及ぶベトナム国内最大級のタウンシップ開発だ。野村不動産は、このうち4万m2の敷地に全5棟、総戸数約3000戸の分譲マンションを建設する事業に参画する。松尾はプロジェクト推進に向けての意気込みを語る。「ベトナムにおいて、開発事業の知見が全くないところからスタートしましたが、プロジェクトに駐在員を派遣して、現地の商習慣等の理解を深めるなど経験を積み上げました。今回参画を決めたエコパーク・プロジェクトでは、当社が培ってきたノウハウを活用すべく、企画設計段階から積極的に事業に携わります」

一方、「我々が良いと思うものでも、現地の人からすれば受け入れられないこともある」とベトナムで実感した保泉は言う。「無理やりこちらの価値感を押し付けるのではなく、現地の声を拾うことが大切だと感じています。ベトナムに出張中は、ビジネスパートナーだけでなく、ビジネスに関係のない人とも交流を持ち、何に対してもアンテナを高く張っていたいですね。そこからいろんなヒントが得られると思っています」

ベトナムは今後も成長を続け、また時代も移り変わっていく。そうした中で、野村不動産がベトナムにもたらすことのできる価値とは何か? その解を導くべく、野村不動産の本格的な挑戦が幕を開ける。

Ecopark プロジェクト