Dialogue02

新規事業人起点の発想

人々が望む潜在的ニーズを起点に、
新しいビジネスとして成立させていく。
そこに野村不動産ならではの
価値創造がある。

野村不動産は常に人々が望む潜在ニーズをキャッチし、それを起点として、他にはない特徴を持つ新規事業を生み出している。そこには正解のないものをカタチにし、新しいビジネスとして成立させていく難しさがある。それぞれの部署で、新規事業・新規サービスに携わる若手社員3人に、そのプロセスにおける苦労や、人々に新たな価値を提供する醍醐味などについて語ってもらった。

※所属部署はインタビュー取材当時
のものになります。
  • 大西 桃加
    2019年入社
    都市開発第二事業本部
    物流事業部
    大西 桃加
  • 松代 拓也
    2020年入社
    (コーポレート)DX・
    イノベーション推進部
    松代 拓也
  • 渡辺 直
    2019年入社
    都市開発第一事業本部
    ビルディング事業三部
    渡辺 直

社内に経験者、有識者はいない。
考え行動し決めるのは自分。
若手時代からチャレンジングな
新規事業に挑む。

渡辺
今日集まった3人の共通点は、それぞれ“新規事業”に携わっていることですね。僕は入社1年目にいきなり、法人限定の多拠点型時間貸しサテライト型オフィスH1Tの新規開発プロジェクトに放り込まれて(笑)。何も決まってなくて、社内の誰に聞いてもわからないところで、自分たちで決めなければいけない状況に直面しました。
大西
私は入社3年目から、物流施設内での省人化・効率化を支援する「Techrum(テクラム)」という新しいサービスの推進を担当しています。具体的に言うと、お客様に倉庫内業務の省人化・効率化を手助けする機械の導入を提案したり、また実際に機械を導入する前にお試しで使っていただける場所を提供する、というサービスです。
物流事業部の事業の中心は、新しい倉庫を建ててお客様に借りていただくことですが、このサービスに関しては倉庫建屋だけでなく、倉庫内のことに深く入り込んだ取り組み。それだけにやはり社内に知見のある方が少ない状況があります。
渡辺
似たような状況ですね。そんな中、「運営のこの部分は任せる」なんて言われて、例えば、H1Tの清掃会社を決めるために何社かに電話して相見積もりを取って、最後は自分の判断で清掃会社を決定して……。そんなところから運営ルール策定、システム開発、店舗開発、新規提携先開拓、派生新規ビジネスの立案から実行まで担当。最初から1年目として扱われなかった分、大変だった半面、やりがいも感じていました。
大西
私は今、事業を推進すると同時に、お客様やパートナー会社の方々との会話を通じて、専門知識を学ぶことに苦労している最中です。
松代
私が今携わっているのは、全社グループ社員に対して働きかけることによって、“新規事業”が生まれる土壌を醸成していくためのプロジェクト。具体的には、全社グループ社員対象の事業アイデア育成制度NEXPLORER(ネクスプローラー)の制度設計、運営業務を担当しています。
実は過去にも、事業アイデア提案制度を実施していたのですが、新規事業を募集するだけでなく、事業部門だけでは行いにくい新規事業育成のサポートや、それを担う人材の育成や発掘も必要ということで、その環境づくりにも力を入れています。新たな制度の設計なので、ルールや前例がないことがほとんど。それはお二人と同じです。決めることを決める必要があるし、不確定要素が多い状況下でも前に進まなければならない。そこに大変さがあります。

お客様は今何に困っているのか?
何を求めているのか?
徹底して追求する先に、
これまでにない新規事業がある

渡辺
H1Tの新規開発プロジェクトは、「人起点の発想」そのもの。発想の始まりは、2018年頃からサテライト型シェアオフィスの需要が高まり、そんな中、特定のエリアを持たない当社なら、多拠点型展開で多くの企業の皆さんに役立つサービスが提供できると考えたことでした。
大西
テクラムは、倉庫内作業にお困りごとのあるお客様に対して、最適なマテハン機器(物流業務を省人化・効率化するために使用する機械や設備)の導入支援をすることで課題解決に導きたいという思いが始まり。同業各社も似たような事業に取り組んでいますが、ロボットメーカーや物流会社に丸ごとお任せするパターンが多いです。それに対して野村不動産は今後のために必要という考えのもと、複数のパートナー会社さんの知見をお借りしながら、お客様に対して一緒に提案しています。手探りながら自分達で行っている分、そこは泥臭くて苦労は尽きないのですが、今後、マテハン機器の知見や、提案時に得たお客様の声が蓄積していくと、よりお客様のニーズを捉えたサービス設計が可能になり、それが当社のアドバンテージになっていくと思います。
渡辺
泥臭く地道な面は、こちらも同様です。H1Tは、登録企業の管理者の使い勝手と、実際に店舗を利用する社員の方々の使い勝手と、両方を考えなければなりません。そのため常に双方から困りごとや要望を吸い上げる努力をしていますし、それらをシステム担当や運営チームと共有して、より管理しやすいより利用しやすいオフィスへと改善し続けています。
松代
H1T稼働後は管理者、利用者の声が聞けますが、オープンする前は、どうユーザーを想定して、サテライト型シェアオフィスを設計されたのですか?
渡辺
自分が利用したらどう思うかというのをまず考えました。あとは、実験的に当社社員で使ってみて使い勝手を考えたり。個室一つにしても、暖色系の灯りがいいか、寒色系の灯りがいいか、また、サテライト型シェアオフィスを使用する際はなるべく持参する荷物を減らしたいから、マウスやキーボード、USBの充電コーナーがあると便利だよな、とか。
大西
倉庫の場合は、自分がユーザーにはなり得ないので、「自分だったらどうか」は考えられないんですよね。その分、お客様にヒアリングする。とはいえ、ピンポイントで「ここが困っています」なんて言っていただけないこともあって。それで勉強しながらではありますが、お客様のパターン別に、「こういうところに困っているのではないか」とある程度仮説を立てて、お客様との会話を地道に重ねています。
渡辺
なるほど。しかしいずれにしても、当社にお客様の声をどんどん吸い上げていいものをつくっていくという価値創造の文化があるのは間違いない。どんな事業においても、「ユーザーはどう思っているの?」ということに発想の起点を置くという考えがあると思います。
松代
NEXPLORERのお客様は全社グループ社員になりますが、そのお客様の使い勝手をすごく考えていますよ。大学のキャンパスみたいにしたいと思っていて、NEXPLORERのコミュニティの中で自由に学んでいいし、自分が学びたいEラーニング動画を受講してもらってもいいし、グループ会社間を超えて参加者同士で勉強会を開いてもらってもいい。Eラーニングや業界動向が学べるコンテンツやTeamsなどのコミュニケーションツールを用いてそのような環境を提供しています。

他にはできない、
野村不動産にしか
できないこととは何か?
その課題意識が、お客様にもたらす
価値とは。

大西
本格的に提案活動を始めて約半年を経て、少しずつではありますが、お客様のお役に立てていると感じられる機会が増えてきました。お客様はマテハン機器を導入したいと思っていても、いろんな機械がどんどん増えている中で、何を選んでいいかわからない状態なんです。そんなときに、「自社の機械を売らなければ」といったしがらみのない野村不動産がフラットな立場で、「お客様の現場にはこの機械が最適では?」と提案することに、お客様は大きな価値を見出してくださっています。
渡辺
お客様の現場を熟知した野村不動産ならではのサービス提供価値がそこにありますね。H1Tについていえば競合他社より後発だったのですが、先発のどこよりも“安くて高品質なサービス”を提供することに、野村不動産らしさを発揮しています。「言うは易し行うは難し」なんですが(苦笑)。それを実現するために、店舗一つとっても運営費、賃料などをギリギリのところまで交渉し、結果的にお客様満足度の高いサービスにすることができました。
松代
NEXPLORERを開始して約半年、上期が終わった段階で、参加者アンケートを実施したところ、8〜9割の方に満足していただいています。中でも、お客様の困りごと=不満・不可能という点に着目してその解決策を考えグループ内で提案する研修が一番好評でした。
渡辺
直接、ユーザーの声を聞くのは大事ですよね。H1Tの店舗ではお客様が意見を書ける交換ノートを置いています。「店舗を増やしてほしい」「こんなサービスがあるのだったら、前から使いたかった」という意見を見て、実際にお客様のお役に立てていることがわかり、苦労してよかったと心底思いました。
松代
NEXPLORERの試みでよかったなと思っているのは、日常業務では接点がない異なるグループ会社間で接点ができて、そこからアイデア提案やチーム提案につながっていること。ここを起点にグループ全体でアイデアを育んでいければいいと思うし、そこで得た知見を必ずしも新規事業につなげなくても、それぞれが現場に持ち帰って活かしてもらえればなと思っています。
渡辺
面白そうですね。実はH1Tは、グループ内の営業会社に会員獲得を行ってもらったりしています。野村不動産グループ全体のリソースをうまく活かしてシナジーを発揮していくという風土の醸成は、今後新規事業に取り組む際、大きな力になりますね。

より良い価値を提供するために、
常に「なぜ」を問い続ける。
そこに野村不動産に脈々と
受け継がれるマインドがある。

渡辺
H1Tの取り組みを通してこだわったのは、「なぜ」を追求することでした。正解もなく、行動しないと何も始まらないから、まず行動する、そして「なぜ、これをやらなければならないのか」考える。常に自分の中で問い続ける日々だったし、今もそうです。
大西
正解がないのは渡辺さんと同じ。こういう方針、仕組みでやっていこうと最初に決めたとしても、いざお客様に話を聞いてみると、これだとあまりニーズがないのではないか、という壁にぶつかったり。そのため最初に決めたことに固執せず、いろんな方々から意見をもらいながらブラッシュアップしています。
松代
常になぜやるのかという目的意識を持つことは重要ですよね。NEXPLORERも決まってないことしかない状態なので、ある程度、走りながら考える必要があるし、その一方でその都度、立ち止まって目的意識に立ち返る必要もある。その繰り返しのような気がします。
渡辺
みんな試行錯誤しているんですね。さて、では最後にそれぞれのプロジェクトの今後の展望を話しましょうか。H1Tは去年100拠点以上増やしたので、今後は会員獲得とともにアクティブユーザーを増やすことが目標です。
また、オフィスビル事業全体としては、時間貸しサテライト型シェアオフィスH1T、中規模サイズの賃貸オフィスPMO、小規模サイズの賃貸オフィスH1O、2025年竣工予定の芝浦の大規模オフィスまで、アセットが充実してきている中、お客様にオフィスを提案するというよりも、“働き方”を提案する事業に軸足を移していければと考えています。例えば、「お客様の会社の働き方だと、このオフィスとこのオフィスを組み合わせれば、コスト削減できた上、仕事の効率化が図れます」と。
大西
これまでお客様が物流施設を決める主なポイントはタイミングと立地、価格でした。そうではなくて、「野村不動産なら倉庫内についても提案してくれて、自分たちが使いやすい物流倉庫を提供してくれる」ということで選んでいただけるようにしていきたいと思っています。
松代
NEXPLORERの参加者の皆さんに取り組んでいただいている事業アイデアの企画・検討のプロセスをしっかり残していきたいと思っています。アイデアが最終的に事業化するかそうでないかは、あくまでもその時のタイミングの結果。例えば、H1Tも10年前のサテライトオフィスが主流でない時期であれば、提案しても事業化まで至らなかった可能性もあるかもしれません。ですので、プロセスを残しておけば、市場の潮目が変わったタイミングで参考にできると思うのです。
渡辺
いいですね。野村不動産は「固定資産があって何もしなくても賃料収入が入ります」なんて事業モデルではないだけに、成長し続けなければいけないというマインドがある。そんな中から画期的な新規事業が生まれてきたのだと思います。さらにお客様を満足させるためには何をすればいいか、市場を開拓するためにはどんなターゲットにアタックすべきか……。そのあたりを野村不動産グループ全体で考えられる土壌を醸成し、さらに新規事業が生まれやすい会社にしていきましょう!