街を利用する人たちと一緒に未来を創りあげる。それが「街を利用する人たちと一緒に未来を創りあげる。それが「野村不動産の街づくり」。

野村不動産が「国家戦略特区」としてエントリーした芝浦一丁目地区。現在、オフィス、ホテル、商業施設、賃貸マンションなどで構成される2棟のタワービルの建設を含めた同地区の大規模複合開発に向けて、特区指定の申請準備を進めている。申請が通れば、2020年までに着工し、2030年頃の完工予定となる。いわば「街づくり」とも言える開発規模で、会社としてもこの規模は史上初の試みだ。未来を見つめながら、プロジェクトをけん引する4名のストーリーを紹介する。

  • プロジェクト責任者
    金井 治
    1992年入社
    都市開発事業本部
    芝浦プロジェクト推進部長
  • プロジェクト推進担当
    四居 淳
    2006年中途入社(新卒:1999年)
    都市開発事業本部
    現 芝浦プロジェクト企画部
  • 商業施設担当
    森谷 秀嗣
    2009年入社
    都市開発事業本部
    商業施設事業部
  • オフィスビル担当
    森野 亮
    2009年入社
    都市開発事業本部
    ビルディング営業部
    ※現 住宅事業本部 住宅営業二部

都市開発のブランド化を目指して

2009年12月、野村不動産はM&Aを実施し、東芝不動産の筆頭株主となる(現・NREG東芝不動産)。同社が所有していた資産の中で最大の物件が、今回の主役である「浜松町ビルディング」だ。野村不動産はこのビルの資産価値を向上させるチャンスをうかがっていた。そこに「国家戦略特区制度」へのエントリーの話が持ち上がる。

当時NREG東芝不動産に出向していた金井は、大きなチャンスと判断。開発企画本部と協働で野村不動産内に立ち上がった「国家戦略ワーキンググループ(WG)」に参加した。大手デベロッパーが国家戦略特区制度に名乗りを上げる中、何としても浜松町ビルディングを中心とした大規模複合都市開発を行うべきだ、と第一優先案件となるようWGで調整を図った。

「やらない理由は何もない、と思いました。野村不動産には住宅部門で『PROUD』のブランド化に成功しています。次はオフィスビルを含めた都市開発のブランド化を目指すべきだとアピールしたのです」(部長・金井)

各セクターからスペシャリストが集結

4ヶ月程のWGでの議論を経て、金井の提言は実を結ぶ。そして、2015年6月に国家戦略特区制度へのエントリーを無事完了し、本申請を行う権利を確保した。しかしここまでのビッグプロジェクトとなると、野村不動産にも知見が少ない。そこでオフィスビル・商業施設・ホテル・住宅の4セクター及び建築部から代表が集まり、総勢15名の「芝浦プロジェクト」商品計画部会を立ち上げる。

入社20年超の金井から、当時5年目の森谷(商業施設)、森谷の同期で最後発の参加となった森野(オフィスビル)と、様々な人材が一堂に会したこのプロジェクト。「自分たちはどんな街づくりをすべきか」「アセットをどう最有効活用すべきか」など、キャリアの差を超えたフラットな議論が進む。

「商品計画部会での議論はもちろんですが、自部署に戻れば専任チームでまた議論をします。さらに、オフィスビル部門30名が何らかの形で関わっている。まさに全社を挙げたプロジェクトなのです」(オフィスビル・森野)

社会を未来にデリバリーするためのプログラム

各セクターの代表者を通して様々なアイデアが集まり、再開発の方向性は見えてきた。しかし部会のファシリテートを行っていた四居は、しだいに違和感を覚えるようになったという。このままでは各セクターのアイデアの足し算以上のものが見えてこない。野村不動産史上最大の「街づくり」を通して、我々は、これからの社会に対して何を提供したいのか。これから大きく変化する時代に、デベロッパーとして「街」という社会インフラを、何故、何のために、創ろうとしているのか?この命題に応えることが必要だと感じたのだ。
そこで部会からさらに分科会を設けて、1年半という時間をかけてコンセプトワークを行う。

「この街で働く人、住む人、食事や買い物に来る人、宿泊する人、地域の人、これから生まれてくる子どもや、これから社会に出ていく学生まで視野に入れ、我々が成すべき仕事は何なのか。みんなで本気で青臭く考えています。まだ、結論は出していませんが、現時点では、街づくりとは『社会を未来にデリバリーするための営み・プログラムであり、街はその装置だ』と捉えています。」(事業三課・四居課長)

その街にいる人たちが誇りを持てる空間に

芝浦プロジェクトはエリアを管轄する東京都や港区など行政との協議を続けながら、野村不動産社内でもより詳細の検討が同時進行中だ。いったんはたどり着いたコンセプトワークも、まだまだこれから拡張させ、深度化し、細部を詰めていくという。しかしプロジェクトを動かす面々は、2020年までの着工、そして2030年頃の完工に向けて、意識を前方に集中させている。

「予定通りに完工しても、それはモノができたというだけで、本当の『街づくり』はそこからスタートします。そのとき私は40代。胸を張って『自分が手掛けた』と言えるようにしたいと思います」(商業施設・森谷)

最後に、金井は《CIVIC PRIDE》という言葉を付け加えた。「2030年、その街にいる人たちが誇りを持てるような空間にしたいですね。そして一緒に街を進化させ、将来につなげたい。全員、そう考えています」